『産後うつと食生活の関係』

2020年7月1日 水曜日

妊娠とはゴールではなく出産から育児と一生をトータルでサポートする事を考えると先ずはじめに妊娠、そして出産があります。

 

出産後に相談をうけるNO。1は産後のうつについてです。

今回は『産後うつと食生活の関係』について沢山の論文がありましたので記載致します。

 

 

 

 

  『産後うつと食生活の関係』

 

 

 

 

出産後1、2週間から数か月で10〜20%の頻度で生じるとされている産後うつですが、

食事パターンが発症に影響を及ぼすという研究報告(1)が、オーストラリアの

大学からなされています。

 

 

果物や野菜、魚、穀物、豆類、ハーブを中心としたバランスの取れた食事を食べている女性は発症率が低いことが分かったというのです。栄養素としては、魚の油に豊富なDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸が鍵になるのだそうです。

 

オメガ3脂肪酸と妊娠中の抑うつ症状との関係は日本でも研究されていて、富山大学の研究グループが血中のEPAやDHAの濃度を妊娠前期に抑うつ症状のあった283人と、なかった283人とを比較したところ、EPA濃度が高い女性ほど抑うつ症状になりにくかったとのこと。(2)

 

 

 

このオメガ3脂肪酸は妊娠する前から妊娠中、出産後まで、母親になる女性だけでなく、その子どもの心と身体の健康に影響を及ぼすことがわかっています。

ハーバード大学のEARTH研究では、DHAやEPA、特にEPAの摂取量や血中濃度が高いほど妊娠率や出産率が高いことを明らかにしています(3)。

 

 

また、妊娠中のオメガ3脂肪酸は早産や低出生体重児のリスク低減に働いたり(4)、出生児のぜんそくの発症率を低下させる(5)という研究報告もなされています。

 

 

 

 

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そして、母親の産後うつの低減にまで関与しているというのですから、妊娠希望の女性にとって、オメガ3脂肪酸は意識して摂取すべき栄養素です。

 

 

ところが、このオメガ3脂肪酸を補充する上で大切なことが、意外に知られていないようにおもいます。そこで、オメガ3脂肪酸の補充について考えてみたいと思います。

 

 

まず、オメガ3脂肪酸は摂取しておきさえすればそれでよいというわけでありません。なぜなら、オメガ3脂肪酸の濃度を高めることだけでなく、オメガ6脂肪酸とのバランスが重要であるからです。

 

 

 

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、代謝(変換)され、互いに相反する作用をもつ、局所的にホルモンのような働きをする物質になります。

 

 

 

最終的に、オメガ3脂肪酸は抗炎症、血管拡張に、オメガ6脂肪酸は炎症促進、血管収縮に働く物質になるのです。そして、加工精製食品が多く出回っている現代の食環境は、それらのバランスがオメガ6過多、オメガ3不足に傾き、炎症体質や血流悪化を招き、さまざまなアレルギーや生活習慣病のリスクを高めることになっているのではないかと考えられています。

 

 

妊娠や出産には炎症体質が招く慢性炎症が大敵であることはご承知の通りです。

そのため、オメガ3脂肪酸を補充するだけでなく、それと同時にオメガ6脂肪酸を減らさなければ、「片手落ち」なのです。

 

 

具体的には、脂肪の多い魚や亜麻仁油、葉物野菜、ナッツ類などオメガ3脂肪酸の豊富な食品を増やしたり、DHAやEPAのサプリメントを補充したりする一方で、揚げ物や加工食品、スナック菓子類を大きく減らすということです。

 

 

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は体内でつくることが出来ないため必須脂肪酸と呼ばれていて、外から(食べて)取り入れるしかありません。

 

 

そのため、食べ方はそれらのバランスを決定することになり、食事全体を調整し、最適なバランスにすることが肝要なのです。このことは必須脂肪酸のバランスの乱れが招く「炎症」だけではありません。

 

 

同じように妊娠する力に影響を及ぼす「酸化ストレス」しかり、「インスリン抵抗性」しかり、「子宮内フローラ(細菌叢)不良」しかり、です。

 

 

それらは卵子の老化を早めたり、着床環境を悪くしたりするとされていますが、単に、抗酸化物質や抗酸化サプリメント、糖尿病薬、乳酸菌を摂取するだけでは、対症療法的であり、やはり、「片手落ち」と言わざるを得ません。

 

 

活性酸素の発生量を減らし、血糖値の急上昇を招くような食べ方をやめ、子宮内や腸内の細菌叢の悪化を食い止めることも、同時に取り組むべきでしょう。

 

 

体内のあらゆる働きは絶妙なバランスの上に成り立っているものです。

 

なにかを増やせば、なにかを減らすことも、必要で、大切なことです。

 

 

参照文献
1)Matern Child Health J. 2020 May 04; doi: 10.1007/s10995-020-02949-9.
2)Transl Psychiatry. 2016; 16: e737.
3)Hum Reprod 2018; 33: 156.
4)Cochrane Database Syst Rev. 2018; 11: CD003402.
5)N Engl J Med 2016; 375: 2530.

 

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