不妊治療

『不妊症の一般的な検査~③AMH(抗ミュラー管ホルモン)』

2020年11月15日 日曜日

抗ミュラー管ホルモン(AMH)でわかる卵巣年齢

 

近年、不妊治療に携わる産婦人科医の多くが、女性の卵巣年齢に注目するようになりました。

 

血液中のAMHを測ることによって卵巣予備能力がわかるようになってきたのです。

 

これを不妊の情報として役立てることができます。

 

AMHは卵巣の中にある未熟な卵胞から分泌されています。

 

 

卵巣の中に、将来排卵されて妊娠する可能性のある卵子を含んだ卵胞がたくさんあると、血液中のAMHが高くなり、卵胞が残り少なくなるとAMHが低くなります。

 

基本的にAMHの値は年齢とともに低下し、卵巣の中の卵子が残り少なくなると検出できなくなります。

 

 

若い方でも卵巣年齢が進んでいたり、またはその反対の方もいらっしゃいます。

 

 

実際の年齢と卵巣年齢の間にはズレが生じていることも多いので、これから妊娠を望んでいる方は、一度、血液検査でAMHを調べ、ご自分の卵巣年齢を知っておくことをおすすめします。

image2525

 

 

この検査は、健康保険が使えないため、全額自己負担となりますが、検査は採血だけで簡単なものです。

 

卵巣年齢が実際の年齢よりも進んでいる場合には、たとえ年齢が若くても早期の妊娠、出産が望まれますので、ぜひとも受けていただきたい検査です。

 

不妊症の一般的な検査 ②血中ホルモン検査でどんなことがわかる?

2020年11月9日 月曜日

 

不妊治療において重要な意味を持つのが血中ホルモン検査です。

 

排卵や妊娠の成立・維持に影響を持つホルモンが、正常に分泌されているかどうかを調べます。

 

女性のからだは、脳からの指令をホルモンが卵巣や子宮に伝え妊娠の準備をします。

 

ホルモンの分泌が正常であれば卵巣や子宮も正常に機能しますが、ホルモンの分泌に問題があると排卵や受精卵の着床に障害が起こり不妊の原因になります。

 

 

 

妊娠に関わるホルモンは、月経周期に応じてダイナミックに変化しますので、測定時期によって大きく値が異なります。

 

ですので検査は月経期と黄体期の2回行います。

 

なお、排卵日を予測するときなどは尿からホルモン値を測定することもあります。

 

下図に具体的なホルモンの種類と検査でわかることをまとめていますので、ご参考にしてください。

 

不妊の原因となる多嚢胞性卵巣症候群、黄体機能不全なども、これらの検査でわかります。

 

 

image (7)

 

 

不妊症の一般的な検査 ①超音波検査は何のためにする?

2020年11月8日 日曜日

 

今回は超音波検査についてです。

 

超音波検査はプローブという器具から出る超音波を体に当て、はね返ってきた信号をモニターに映し出す画像の検査です。

 

 

プローブを膣内に入れる経腟法と、お腹に当てる経腹法という方法があります。

 

不妊症の検査ではおもに経腟プローブが使われます。
痛みはなく、初診以降もさまざまな時期に行う検査です。

 

 

超音波検査でわかるのは、子宮形態異常、子宮筋腫、子宮腺筋症、不妊と密接な関係があるチョコレート嚢胞などの卵巣腫瘍、卵巣にたくさんの小嚢胞がみられる多嚢胞性卵巣症候群などです。

 

image (4)

 

 

また、排卵の有無や排卵の時期を知るうえでも重要な検査です。

 

自然周期では、通常、片側の卵巣に1個の卵胞が発育し、直径が21mm前後になると破裂して排卵が起こります。

 

破裂した卵胞は黄体へと変化します。

 

 

これらの卵胞の発育、破裂、黄体への変化を、超音波検査によってつぶさに観察できるのです。

 

image (5)

 

 

 

卵胞の発育に同調して子宮内膜も発育、成熟します。

 

月経直後の子宮内膜は薄い状態ですが、徐々に厚くなり、排卵時には10mm前後になります。

 

画像では排卵前の子宮内膜は、白い3本の線に縁取られた黒い木の葉状に、排卵後は全体が白く見えます。

 

子宮内膜の厚さや見え方から、排卵の時期を推定できます。

 

排卵期になっても子宮内膜が厚くならない場合は、不妊の原因となります。

 

超音波検査では、子宮内膜の厚さを確認することも重要です。

 

 

image (6)

 

 

簡単にまとめますと、超音波検査は

 

・子宮や卵巣の内側の様子までわかる

・子宮内膜の厚さを知るにも重要な検査

 

ということになります。

『PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)のメリット、デメリット』

2020年11月5日 木曜日

 

『PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)のメリット、デメリット』

 

【メリット】

 

〇染色体異常のない可能性の高い胚を移植することで妊娠率が向上する可能性があります。

 

〇染色体異常のない可能性の高い胚を移植することで流産率を低下させる可能性があります。 これにより、流産をすることによる身体的・精神的ストレスの軽減が期待できます。

 

〇上記のような理由から、妊娠までの時間を短縮できる可能性があります。

 

〇染色体異常のある赤ちゃんを妊娠・出産する可能性が大幅に減少すると考えられます。また、検査自体が 妊娠前に行われるため、結果に対する対応を考える時間を十分に設けることが可能です。

 

〇妊娠後におなかに針を刺して行う出生前診断(確定診断)とは異なり、検査自体に母体を損傷するリスクはありません。

 

 

image12

 

 

【デメリット】

 

〇細胞を採取することで胚盤胞へダメージを与える可能性があります。

 

〇そのダメージにより着床しない、流産する、赤ちゃんに影響を与える可能性を否定できません。

 

〇健康な赤ちゃんとして生まれる可能性のある胚が移植に適さないと判断され、破棄される可能性を否定できません。

 

〇海外の研究では、PGTを行った赤ちゃんとそうでない赤ちゃんを比べた時に先天異常(生まれてから間もなくわかるような病気など)をもつ割合は同じくらいであるという結果が得られています。ただし、まだ新しい技術であるため生涯にわたって影響が本当にないのかということの確認はできていません。

 

〇治療に必要な費用に加えて、検査に必要な費用が別途かかります。

 

参考にして頂けたら幸いです。