女性の1日あたりコーヒー杯数の不妊治への影響

2019年7月29日 月曜日

不妊治療をするなかでコーヒー(カフェインの摂取)については度々、ご質問を頂きます。
 
 
カフェインに関して不妊治療の分野ではどちらかというと後ろ向きな意見が多い気がしていましたがこの『不妊治療にカフェインは良い?悪い?論争」に対して精度の高いビックデータの論文が今年2019年に発表され一つの終止符が打たれました。
 
 
 
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今回は『女性の1日あたりのコーヒー杯数の不妊治療成績への影響』と言う面白い論文が出ましたので和訳し添付致します。
 

 

 

『女性の1日あたりのコーヒー杯数の不妊治療成績への影響』

 

 

人工授精を受けている女性で、1日に1〜5杯のコーヒーを飲む女性は飲まない女性に比べて妊娠、出産に至る確率が1.5倍高い一方で、体外受精や顕微授精を受けている女性ではコーヒーの摂取量と治療成績に関連が見られないことがデンマークで実施された研究で明らかになりました。


オーフス大学の研究チームは、オーフス大学で不妊治療を受けている女性を対象に1日のコーヒー摂取量と治療法別治療成績との関連を前向きに調査しました。

 

1708名の女性を対象に、治療開始ごとに1日のコーヒー摂取量を「飲まない」、「1-5杯」、「6-10杯」、「10杯以上」から選択してもらい、人工授精1511周期、体外受精/顕微授精2,870周期、凍結融解胚移植1355周期の治療成績を対象としました。

 
その結果、体外受精や顕微授精では女性の1日のコーヒー摂取量は治療成績への影響はみられませんでした。
 
 
一方、人工授精では1日にコーヒーを1〜5杯飲む女性は飲まない女性に比べて、妊娠率(adjusted relative risk 1.49; 95% confidence interval, 1.05-2.11) 、出産率 (adjusted relative risk 1.53; 95% confidence interval, 1.06-2.21) ともに有意に高いことがわかりました。
 
 
このことから人工授精ではコーヒーの摂取が治療成績によい影響を及ぼす可能性があることが示唆されました。

 
 
 
注釈

全日本コーヒー協会の調査では日本のコーヒー消費量は、年々、拡大傾向にあることがわかります。実際にカフェが増えたり、コンビニでコーヒーが買えるようになったりと、そのことが実感できます。

 
そんなポピュラーな嗜好品であるコーヒーが妊娠にどのような影響を及ぼすのかについて、これまで多くの研究報告がなされています。

 

 
ハーバード大学のEARTH Studyでは、治療前の1年間のカフェイン摂取量はART治療成績(子宮内膜厚、獲得成熟卵数、着床率、妊娠率、出産率)にマイナスの影響を及ぼさないとの報告がなされています。
 
 

ART治療成績とは関連しないというのは今回の研究結果と一致していますが、コーヒー摂取の人工授精の治療成績への影響を調べたのは、今回の研究がはじめてで、それもよい影響を及ぼす可能性があるというものでした。

 
私が推測するに
カフェイン摂取がなぜ人工授精の治療成績へよい影響を及ぼすか、それはカフェインが卵管の繊毛の働きを刺激し、卵子のピックアップ(排卵後の卵子の卵管への取り込み)や輸送の機能によい影響を及ぼすのではないかと推測しています。

 

 
 
また、カフェイン摂取は黄体期のプロゲステロンレベル上昇、無排卵リスクの低下と関連するという報告もあり、さらには、カフェイン摂取はインスリンの感度を高めるとの報告もなされており、これらがコーヒー摂取が人工授精の成績によい影響を及ぼすメカニズムかもしれないとの見解を示しています。

 

 
このように適量であればコーヒーの不妊治療成績への影響はそれほどの心配はないようです。

 

 
ただし、妊娠後のカフェイン摂取は流産リスクを上昇させるという研究報告がありますので、妊娠後は控えるのが無難なようです。
 
 
 
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