新着情報
2019年8月26日 月曜日
『さい帯血のビタミンDレベルと子のADHDとの関係』
Australian and New Zealand Journal of Psychiatry.
さい帯血のビタミンDの低いレベルは、子のADHD(注意欠陥/多動性障害)の症状に関連することがデンマークで実施された試験で明らかになりました。
南デンマーク大学の研究グループは、南デンマーク地域のオーデンセ市の妊婦を対象にした前向きコーホート研究(The Odense Child Cohort study)に参加した女性からさい帯血を提供してもらい、ビタミンD(25(OH)D3)レベルを測定し、その子が2-4歳になった時点で、両親に「子どもの行動チェックリスト」に回答してもらい、さいたい血中のビタミンDレベルと子のADHD(注意欠陥/多動性障害)の症状との関連を解析しました。
1,233組の母子のデータが得られ、子の平均年齢は2.7歳、平均のADHDスコアは2.7でした。ADHDスコアが90パーセント(スコアが低いほうから数えて90%の位置にあたる値)以上とさい帯血中のビタミンDの低レベルや母親の低年齢、低学歴、そして、妊娠中の母親の喫煙や飲酒に関連しました。
そして、さい帯血中のビタミンDが25nmol/L以上だった子どものADHDスコアは25nmol/L未満だった子どもに比べて低く、30nmol/L以上だった子どもも30nmol/L未満だった子どもに比べてスコアが低いことがわかりました。
また、ADHDスコアが90パーセント以上になる確率はビタミンDレベルが10nmol/L増えるごとに低くなりました。
こ
のことから、さい帯血中のビタミンDの低レベルは子のADHDの症状に関連することがわかりました。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)とは、
「年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び(又は)、衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもの」と定義されています(文部科学省)。
これまでビタミンDレベルの低い子どもとADHDに関連するとの研究報告があったことから、今回の研究が実施され、さい帯血中のビタミンDの低レベルとその子のADHD症状が関連するという結果でした。
ただし、これをもって、ビタミンDの不足がADHDの原因であるということは言えません。
研究ではさい帯血中のビタミンDレベルとチェックリストによるADHD症状のスコアとの関連を調べたもので、決して、医師による診断がなされたわけではなく、また、そもそも、ADHDは明確な原因はわかっていませんし、さまざまな因子が関与するとされています。
そのことを理解した上で、妊娠、出産、そして、子の健康においてもとても大切な役割を担うビタミンDは、葉酸と同様、ビタミンDも不足しないようにサプリメントで補充することが大切であると研究グループはアドバイスしています。
天然の葉酸塩(6(S)-メチルフォレート)とビタミンD3,
に つきましては、もりぎんまでお問い合わせください。
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2019年8月24日 土曜日
携帯電話と妊活の関係についてよく聞かれます。
『不妊クリニック通院中の男性の携帯電話の使用と精子の質』
Reproductive Toxicology 2017; 67: 42-47
携帯電話の使用と精子の質は関連しないことがアメリカで実施された試験で明らかになりました。
ハーバード公衆衛生大学院の研究チームは、EARTH研究(マサチューセッツ総合病院で高度生殖補助医療を受けているカップルを対象に治療成績に影響する要因について調べる前向きコホート研究で2006年にスタートして現在も進行中)に参加しているカップルの男性パートナー153名(18-56歳)を対象に携帯電話の使用と精子の質との関係を調べました。
携帯電話の使用については、看護師から配布されたアンケートで、直近の3ヶ月間に携帯電話を使用の有無、1日の使用時間(2時間未満、2-4時間、4時間超え)、また、使用者にはヘッドセットの使用の有無と使用頻度、そして、携帯電話の収納場所(ズボンのポケット、ベルト、鞄、その他)について回答してもらい、精液検査の結果との関係を解析しました。
その結果、携帯電話の使用の有無や使用時間、収納場所と精液検査のいずれの結果とも関連はみられませんでした。
これまで携帯電話の使用と精子の質の関係については、多くの研究が行われています。それらの結果は、互いに相反するもので、関連するというものもあれば、関連しないというものもあります。
そのため、ハーバード大学のEARTH Studyで行われた試験が今回の報告で、関連しなかったというものです。
今回の試験の特徴としては、精液検査を複数回受けた男性がいたことで、1回の男性は全体の44%で、2回が28%、3回が9%、4回以上が19%で、153名の男性から350の精液が提供されています。
いずれにしても、これまでの研究は横断研究で、ある時点の携帯電話の使用と精液検査結果の関連を調べたもので、どうしても結果の精度は低くならざるを得ません。
そもそも、携帯電話の使用と精液検査結果の関連は、携帯電話の発する電磁波が精子そのもの、または、精子をつくる働きにマイナスの影響を及ぼすのではないかという仮説のもとに行われていますが、それらの因果関係を、直接、調べることは困難です。
私の感覚としては、男女問わず、スマホを操作する時間は、どんどん、長くなっているように思いますが、精子の質への影響についてはなんの結論も導くことができません。
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2019年8月23日 金曜日
『朝食をしっかり、夕食を軽く食べることでPCOS女性の排卵率が高まる』
Clinical Science
朝食をしっかり、夕食を軽く食べることで肥満ではないPCOS女性のインスリン抵抗性や高アンドロゲンが改善され、排卵率が高まることがイスラエルの研究で明らかになりました。
テルアビブ大学の研究チームはBMIが正常な(肥満ではない)PCOS患者60名をランダムに2つのグループに分け、一方のグループには朝食をしっかり食べてもらい、もう一方のグループのは夕食をしっか食べてもらいました。いずれのグループも1日の総カロリーは1800カロリーと同じにしました。
それぞれのグループの3食のカロリー配分は以下の通りです。
・朝食しっかりグループ:朝食980カロリー、昼食640カロリー、夕食190カロリー
・夕食しっかりグループ:朝食190カロリー、昼食640カロリー、夕食980カロリー
そして、90日後にインスリンやブドウ糖、テストステロンのレベルを測定しました。
その結果、いずれのグループもBMIに変化は見られなかったものの、夕食をしっかり食べたグループはインスリンやテストステロンのレベルが高かったのに対して、朝食をしっかり食べたグループはインスリン抵抗性は56%、テストステロンレベルは50%、それぞれ低下し、それに伴い排卵率が50%高まりました。
このことから、朝食をしっかり、夕食を軽く食べることで、食後の血糖値の上昇が抑制され、インスリンをコントロール出来、PCOSの排卵障害の改善につながることがわかりました。
PCO(多嚢包性卵巣)とは小さな卵胞がたくさんみられる状態の卵巣のことをいい、超音波検査で確認できます。
そして、それに加えて、排卵しづらい、あるいは、排卵しないという月経異常を伴うこと、そして、血中男性ホルモン値が高い、または、LH(黄体化ホルモン)値が高いこと、この3つをすべて満たすと、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と診断されます。
男性ホルモンの値が高いため、卵胞は発育するものの途中で成熟が阻害されてしまい、排卵障害や無排卵を招くことで、不妊の原因になります。
ただ、症候群なわけですから、その症状は、決して、一様ではなく、肥満や内臓脂肪過剰、また、毛深くなるなどの男性化傾向がみられることがあったり、インスリン抵抗性といって、インスリンの効き目が悪くなって、糖や脂質の代謝に異常をきたす状態が、男性ホルモン値が高い背景にあることがあり、そのメカニズムはとても複雑なようです。
PCOSによる排卵障害の治療は、まずは、排卵誘発剤を使いますが、あくまで、対症療法です。
そのため、セルフケアとして、ダイエット(減量)が勧められています。特に糖質制限がお勧めです。
PCOSの女性には肥満が多く、減量することで排卵しやすくなるからです。
ところが、特に日本人では、BMIが正常な肥満でないPCOSの女性が少なくありません。そのため、インスリン抵抗性がある場合には、食後の血糖値を急上昇させない食べ方をすることで、血糖値の上昇や下降をより穏やかなものにし、インスリンの分泌を少なくすることでホルモンのバランスが改善されることが確かめられたわけです。
朝食をしっかり食べ、昼食、夕食と次第に軽くすることだけでなく、カロリー制限ではなく、炭水化物(糖質)の量を制限すること、また、食事の際に食物繊維が豊富な野菜から食べ、次にたんぱく質、最後に炭水化物を食べることでも食後の血糖値の上昇をゆるやかにすることが出来ます。
また、このことはPCOSと診断されている女性だけでなく、高血糖状態は卵細胞にダメージを及ぼす酸化ストレスを高めたり、AGEの産生を促進したりして、卵質の低下を招く恐れがありますので、妊娠を望む全ての女性に勧められる「食べ方」です。
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2019年8月21日 水曜日
最近の研究では、腸内フローラ、子宮内フローラ、口腔内フローラは連動しており着床に大きく寄与する事がわかってきています。
『歯周病は妊娠を遅らせるかもしれない』
Journal of Oral Microbiology
唾液中に歯周病の原因細菌や原因細菌の抗体が検出された女性は検出されなかった女性に比べて妊娠するまでにより時間がかかることをフィンランドで実施された試験で明らかになりました。
ヘルシンキ大学の研究チームは歯周病が妊娠しやすさに及ぼす影響を調べることを目的に妊娠を希望する256名の女性を対象に唾液と血液を採取し、唾液中の歯周病原因細菌(Porphyomonas gingivalis、Actinobacillus actinomycetemcomitans)、また、唾液と血液中の歯周病菌の抗体を検査し、12ヶ月間、妊娠の成立を追跡調査し、それらの関係を解析しました。
その結果、1年で256名中、205名が妊娠し、51名は妊娠しませんでした。
妊娠しやすさと有意な関連がみられたのは、唾液中のP.gingivalisの検出と唾液中のP.gingivalisとA.actinomycetemomitans抗体のレベルでした。
唾液中にP.gingivalisが検出された女性の割合は、妊娠できた女性(2.1%)よりも妊娠できなかった女性(8.3%)で有意に高く、唾液中の歯周病原因細菌の抗体レベルは妊娠できなかった女性のほうが妊娠できた女性よりも有意に高いことがわかりました。
また、唾液中にP.gingivalisが検出され、かつ、P.gingivalis抗体レベルが高かった(全体の上位3分の1)女性はP.gingivalisが検出されず、かつ、抗体レベルが低かった女性に比べて、12ヶ月間で妊娠できない確率が3.75倍高いことがわかりました。
さらに、歯周ポケット(歯と歯茎の境目が深くなった状態)がある女性で血液中のP.gingivalis抗体レベルが高ければ12ヶ月で妊娠できない確率が1.62倍でした。
このことから、唾液中の歯周病原因細菌の検出やその抗体レベルは不妊症のリスクファクターになり、歯周病は妊娠するまでに時間がかかる可能性があることがわかりました。
注釈
歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりします(痛みはほとんどの場合ありません)「日本臨床歯周病学会のサイトより」。
歯周病は全身の疾患に関連すると考えられていて、これまで低出生体重児や早産のリスクが上昇することがわかっていました。
今回のヘルシンキ大学の研究は歯周病と妊娠する力との関係を調べた初めての研究とのこと。
結果は関連するかもしれないというものでした。
最近の研究では、腸内フローラ、子宮内フローラ、口腔内フローラは連動しており着床に大きく寄与する事がわかってきています。
妊娠を希望する女性は、必ず、歯周病の検査を受けるようにし、歯のメンテナンスを怠らないようにすることが大切です。
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