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『不育症の原因と治療について③ 血液の凝固因子について』

2020年12月18日 金曜日

血液の凝固因子について書きます。

 

 

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血液は、傷や出血があった際には、様々な因子が働いて固まる仕組みになっていますが、血液が固まりやすい状態が不育症の要因となると考えられていて、次のようなものがあります。

 

 

(抗リン脂質抗体症候群)

 

抗リン脂質抗体症候群では、血液が固まりやすく(血栓ができやすく)、胎盤の血液循環が悪くなり、流産を起こしやすくなると考えられています。

 

 

 

(血液凝固系異常)

 

プロテインS、プロテインC、血液凝固第Ⅻ因子など、血栓を予防する物質が低下することにより、血が固まりやすくなり、流産を起こしやすいとされています。

 

これらの場合には共通して以下の治療を行います。

 

 

 

治療① 低用量アスピリン療法

 

月経周期の高温期(排卵後7日目頃)から低用量アスピリン(100mg)錠を1日1回、1錠内服します。

通常妊娠10週あるいは27週末まで続けます。

 

 

 

治療② ヘパリン療法

 

妊娠判明時から開始します。

異常項目の種類や過去の流死産の既往により、妊娠初期のみ、あるいは分娩前頃まで、ヘパリン2500〜5000単位を1日2回皮下注射(合計1日5000〜10000単位)します。

 

毎日注射しますので、自己注射をご指導されます。

治療①または②を単独で、あるいは治療①、②の併用療法を行います。

併用療法は原則として検査値が2回連続して陽性の場合の方が対象となります。

 

 

治療による副作用

 

低用量アスピリン療法、ヘパリン療法を行うと、通常に比べ出血しやすくなります。

 

ヘパリン療法開始時は、まれですが血小板減少という副作用が起こることがありますので、頻回に血液検査して異常がないか調べます。安定すれば2週〜1カ月おきに検査します。

 

出血の危険性が高いため、ヘパリン療法を中断しなければならない方が稀にいらっしゃいます。

 

また、アスピリンにより端息が誘発されることがあります。端息の既往がある方は医師にご相談下さい。

『不育症の原因と治療について② 子宮や感染症の要因について』

2020年12月15日 火曜日

 

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(子宮の異常)

 

子宮筋腫、子宮内膜症、子宮形態異常(双角子宮、中隔子宮、重複子宮など)、子宮腔内癒着、内膜ポリープなどが流早産の原因となることがあります。

 

子宮鏡検査や子宮卵管造影検査、必要に応じてMRI検査などを行い、流早産の原因となる可能性が高そうな場合は、子宮鏡下手術、腹腔鏡手術(専門施設へご紹介)等により治療を行います。

 

 

 

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(感染症)

 

ウイルス感染症、クラミジア感染症など

膣、子宮、卵管などに炎症を起こしやすい菌やウイルス、病原微生物の感染は妊娠維持を妨げることがあります。

 

治療には抗菌薬を内服したり、膣内に投与を行います。また、感染予防もご提案します。

 

 

 

(染色体変化)(ご夫婦いずれか)

 

夫、または妻のいずれかに染色体変化がある場合に流産を繰り返すことがあります。

染色体の変化がわかった場合、残念ながら治療の方法がありません。

 

しかし、最終的には赤ちゃんを授かることができるケースも少なくありません

『不育症の原因と治療について① 内分泌の異常』

2020年12月12日 土曜日

流産や不育症の原因を特定することは大変難しいことではありますが、不育症の検査で異常が判明した場合の原因とその治療法についてご紹介していきたいと思います。

 

 

まず今回は内分泌代謝異常について書きます。

 

内分泌代謝異常には次のようなものがあります。

 

 

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高プロラクチン血症 (潜在性も含む)

 

不妊の原因としても知られ、妊娠維持に関与しています。

治療:カベルゴリンなどのプロラクチンの分泌を抑える薬を使用します。

 

 

 

甲状腺機能異常

 

甲状腺機能異常の方に初期流産が多いことが知られています。
治療:検査で甲状腺機能異常が疑われる場合は、適切な治療を受けていただける専門の病院等にご紹介させていただきます。

 

 

 

黄体機能不全

 

妊娠継続を維持する黄体ホルモンの不足が考えられます。
治療:排卵後にホルモン剤による黄体補充を行います。

 

 

 

糖尿病

 

空腹時血糖値を測定します。高血糖は流産を招き、胎児奇形を引き起こす可能性もあります。

治療:食事療法を行ったり、必要に応じて適切な治療を受けていただける専門の病院等にご紹介させていただきます。

血液検査でこれらの病態が見られた場合は、治療を行っていくことになります。

 

『特定不妊医療(体外受精)助成金』の新制度について

2020年12月9日 水曜日

2021年1月より、【所得制限が廃止】されることが決定しました。

 

これにより全てのご夫婦に体外受精助成金支給されます。

 

概要は以下の通りです。

 

1. 所得制限が廃止されます (現在は夫婦の合計所得が730万円未満が対象)
※開始時期については、1月の何日開始かは未定となっております。

 

2021.1.18からの通常国会で最終決定されます。(遡り1月1日開始となる場合もございます。)

 

 

2. 対象年齢と回数

 

・40歳未満:6回まで      

     

   ※令和2年3月31日時点で妻が39歳の場合は41歳未満

 

 

・40歳以上43歳未満:3回まで  

   

    ※令和2年3月31日時点で妻が42歳の場合は44歳未満

 

・43歳以上:対象外

 

 

3. 助成金額

 

1回につき最大30万円(2回目以降も30万円)

※従来は初回のみ30万円、2回目以降は15万円でした
(融解胚移植の場合は7.5万円:未定)

 

 

4. ご出産された場合、回数カウントはリセットされます。

 

 

5. 男性不妊症(TESEなど)も制度の対象になります。

※上記内容は”ほぼ決定”ですが2020.12.8現在の予定です。

 

 

厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html

 

 

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最終的に政府の意向で若干の変更の可能性がありますことをご了承ください。