アトピー性皮膚炎のかゆみのメカニズム、九大研究グループが解明 新たな治療薬に期待!

2017年1月16日 月曜日

「アトピー性皮膚炎のかゆみのメカニズム、九大研究グループが解明 新たな治療薬に期待!」
 
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アトピー性皮膚炎でかゆみを引き起こす仕組みに「EPAS1」というタンパク質が重要な役割を担うことを、九州大学・大学院の研究グループが発見しました。すでにメカニズムは解明しており、かゆみを根本から断つための新たな治療薬の開発が期待されます。

 
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アトピー性皮膚炎は国民の7~15%が患う国民病。かゆみによって生活の質が著しく損なわれることから対策が急務となっていますが、そのかゆみを引き起こす重要な物質「IL-31」が生まれるのをどうすれば制御できるのか、メカニズムは不明となっていました。

 研究グループは「DOCK8」という分子を欠損した患者が重篤なアトピー性皮膚炎を発症することに着目。
 
解析したところDOCK8を発現しないマウスには「IL-31」が著しく生まれ、深刻な皮膚炎が自然発症することを突き止めました。
 
さらにDOCK8の下流ではEPAS1が作動し、IL-31の産生を誘導することも発見。
 
IL-31を生み出す上でEPAS1の重要性は、アトピー性皮膚炎患者にも確認できたといいます。
 
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研究者は九州大学生体防御医学研究所の福井宣規主幹教授、大学院医学研究院の古江増隆教授、大学院4年生の山村和彦さんなど。

 
今回の発見に「アトピー性皮膚炎の病態を解明したいという私達の思いが、ようやく実を結びました。
 
新しい治療薬の開発につながることを期待し、今後さらに研究を進めて参ります」とコメントを寄せています。

研究成果は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業インキュベートタイプ(LEAP)および創薬基盤推進研究事業、厚生労働科学研究委託費によるもの。
 
1月9日10時(英時間)から英国科学雑誌「Nature Communications」に掲載されています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170110-00000071-it_nlab-sci.view-000

海外でも「DOCK8」についてこんな論文が発表されています。


「A DOCK for antibody responses」

The reason why some pediatric patients exhibit defective antibody responses, which can lead to recurrent respiratory tract infections and increased allergic responses, is reported this week in a study published in Nature Immunology. These findings may lead to better vaccine development in general and treatments for these immunodeficient patients.

Children harboring DOCK8 mutations encounter recurrent infections due to poor antibody production. What little antibody that is produced in these patients is skewed towards a class of antibodies called IgE, which are associated with allergic responses. Hence these patients are both immunodeficient and have greater susceptibility to severe allergies.

Raif Geha and colleagues looked at the molecular basis for DOCK8 protein function in antibody-producing B immune cells. They found that signaling cascades involving the adaptor protein DOCK8 are required for normal antibody production and generation of B cell memory responses. DOCK8 serves as a platform linking innate signaling molecules, in particular those utilizing MyD88, to downstream kinases that activate the transcription factor STAT3. Disrupting the DOCK8-MyD88 interaction and activation of STAT3 leads to similar antibody production defects.

http://www.nature.com/ni/journal/v13/n6/full/ni.2305.html

 

和訳

抗体応答に欠陥があって気道感染を繰り返し、アレルギー反応の亢進が見られる小児患者がいるが、その原因が明らかになった。この発見が、より良いワクチンの開発や、このような免疫不全患者の治療につながる可能性がある。

DOCK8遺伝子に変異を持つ子供は、抗体の生産が少ないため、繰り返し感染を起こす。このような患者がごくわずかに生産する抗体は、アレルギー反応にかかわる抗体、IgEに偏っている。そのため、このような患者は免疫不全であると同時に、重症のアレルギーを起こしやすい。Raif Gehaたちは、抗体を生産するB免疫細胞でDOCK8タンパク質の機能の分子基盤を調べ、DOCK8がアダプタータンパク質であり、これがかかわる情報伝達カスケードが、正常な抗体生産とB細胞の記憶応答の発生に必要なことを明らかにした。DOCK8は、自然免疫の情報伝達分子、特にMyD88を利用する分子を、転写因子STAT3を活性化する下流のキナーゼと結びつけるプラットフォームの働きをする。

DOCK8-MyD88の相互作用を破壊してSTAT3の活性化を阻害すると、同様な抗体生産不全につながる。

 
「IL-31」「DOCK8」がカギですね!