妊娠する力を左右するものやことはたくさんあります。そして、それについての情報
はもっとたくさんあります。要するに、あいまいで、怪しげな情報が多いということ
です。
なにを信じるべきか、最終的には自分で考え、判断するしかないわけですが、頼りに
なるのは、やはり、エビデンスと言われている、信頼できる医学論文のデータです。
ドクターも、生活面などのアドバイスは、当然、エビデンスに基づいて、患者さんに
アドバイスするわけです。
今回、アメリカ生殖医学会が、ドクター向けに、患者さんに生活習慣についてのアド
バイスをするための見解、「Optimizing natural fertility」を学会の委員会から出
しました。5年前に最初のものが出て、その際にも妊カラで紹介しましたが、5年も
たっているので、今回も取り上げることにしました。
■妊娠力を最適化する
これは、ドクターが患者さんにライフスタイルや性生活についてのカウンセリングや
アドバイスを行う際に指針とすべきガイドラインとして、アメリカ生殖医学会の委員
会が統一見解としてまとめたものです。
━ 妊娠するまでにかかる期間について
通常、妊娠するために、避妊しないでセックスをはじめた場合、最初の月が妊娠の確
率が最も高く、その後、徐々に下がっていきます。
約80%のカップルが最初の6か月で妊娠し、周期あたりの妊娠率は最初の3か月が
最も高くなります。
━ 年齢の影響について
年齢が最も妊娠率に影響を及ぼし、30代後半になると20代前半の半分の確率に
なってしまいます。
年齢の影響は男女ともにありますが、女性のほうが顕著にあらわれ、女性は35歳以
上になると妊娠率は著しく低下しますが、男性の場合、35歳以上の精液所見では、
データ上は低下するものの、実際、妊娠させる力に影響が及ぶのは50歳以上になっ
てからのことです。
━ 男性の射精の頻度の影響について
男性が5日間以上射精しないと精子数に影響が生じる一方で、2日間の禁欲では精子
の数は通常値だったと報告されています。頻繁に射精すると、精液中の精子が少なく
なってしまうとよく言われていますがそのようなことはあありません。
実際、精子の数や質、運動能力ともに正常な男性であれば、毎日射精を行っても、お
よそ、1万匹近くの精子が確認できたとの報告もあります。さらに、乏精子症の男性
でさえ、毎日射精をしたときに精子量と運動量が最大になったという報告もありま
す。
このように男性にとって、頻繁に、たとえば、毎日、セックスであろうと、マスター
ベーションであろうと、射精したからといって、精子の数が少なくなるわけではあり
ません。
それどころか、最近の研究では、頻繁に射精するほうが、新鮮な(つくられてすぐ
の)精子が増え、DNAの損傷率が低い精子が多くなることから、数だけでなく、男
性の妊娠させる力に決定的に影響を及ぼす精子の質も高くなることがわかっていま
す。
お子さんを望む男性は週に3回は射精するのが望ましいと言えます。
━ セックスの頻度の影響について
毎日、セックスを行えば、妊娠の確率は最も高くなります。ただし、それにより、か
えって、ストレスをため込んでしまう可能性もあるので気をつけたいものです。
妊娠を望む221のカップルを対象に行われた調査では、毎日、セックスを行ってい
るカップルは周期あたりの妊娠率が33%と最も高く、週1回になると、半分以下の
15%だったとのことです。
そもそも、なかなか妊娠しないことに悩んだり、焦ったりすることでストレスフルな
ところに、排卵のタイミングに「スケジュール通り」に行うセックスに努めている
と、喜びや満足感よりも苦痛を伴うようになってしまいます。
そして、セックスの回数そのものも少なくなる悪循環に陥ると、皮肉にも、かえっ
て、妊娠しづらくなってしまうのです。
妊娠を切望するカップルへのアドバイスとして、毎日、隔日のセックスは妊娠率が高
くなりはしますが、苦痛を感じだしたら、立ち止まって、ペースを見直すことが大切
かもしれません。