妊娠を望むカップル、不妊治療を受けているカップルにとって、アルコール摂取については、少々、気になるところです。
「飲み過ぎ」は健康に損なうことは言うまでもありません。
また、妊娠中や授乳中はお酒は控えるべきことはよく知られていると思いますが、妊娠前については、飲酒の影響はどのように考えればいいのかについてお話し致します。
まず、厚生労働省が飲酒についてのガイドラインを定めているのでそれを確認しておきましょう。
厚生労働省による飲酒のガイドライン
厚労省は「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20グラム程度である」と定めています。
1日の飲酒量の目安の「アルコール20グラム」は日本の基準飲酒量の1単位に相当します。
ただ、これだけではどれくらい飲めるのかよくわかりません。
お酒の種類によって、アルコール度数が異なりますので、アルコール20グラムというのはどれくらいの量なのか、それぞれのお酒の種類ごとの1単位の量は以下の通りです。
・ビール(アルコール度数5度) 中ビン1本(500ml)
・缶チューハイ(アルコール度数5度)1缶(約500ml)
・ワイン(アルコール度数14度) グラス1杯(約180ml)
・日本酒(アルコール度数15度) 1合(180ml)
1日に飲む量はこれくらいまでにしておきましょうということです。
さらに、厚労省は週に2日は休肝日にするように提案していますので「週に5単位」ということになります。
ただし、これは、あくまで、一般向けのガイドラインで、残念ながら妊娠希望のカップルのためのガイドラインは決められていません。
これまでアルコール摂取と妊娠する力の関係について調べた研究が多数実施されていますので、それらをご紹介いたします。
『アルコール摂取と妊娠する力』
これまでアルコール摂取量と妊娠する力の関係を調べた研究報告では、アルコール摂取量が多くなると、やはり、妊娠しづらくなるとしています。
ただし、週に5単位くらいの飲酒量であれば、妊娠しづらくなるとするものもあれば、影響しないとするものもあり、反対に妊娠しやすくなるという報告もあったりして、「いろいろ」です。
代表的な論文を紹介します。
スウェーデンの研究でストックホルム在住の7,393人を対象にアルコール摂取と不妊症のリスクとの関係を18年間に渡って調べたところ、
週に7単位以上飲酒する女性は
週に2~7単位未満飲酒する女性に比べて不妊症リスクが58%高く
週に2.5単位未満しか飲酒しない女性は
週に2~7単位未満飲酒する女性に比べて不妊症リスクが35%低かった
といいます。
また、7,760人のデンマーク女性を対象に平均4.9年間追跡調査した研究では
女性の年齢が30歳未満であれば、アルコールの摂取量は妊娠に影響を及ぼさなかったのに
30歳を超えると、週に7単位以上飲酒する女性は、週に1単位未満の女性に比べると、不妊症のリスクが2.26倍だったと報告しています。
アルコールの摂取量が多くなるほど妊娠しづらくなり、その影響は年齢が高いほど顕著になるというわけです。
その一方で、飲酒したほうが妊娠しやすくなるとの報告もあります。
29,844人の妊婦にアルコール摂取と妊娠するまにかかった期間を調べたデンマークの調査では
週に14単位以上の飲酒は妊娠しづらくなるが
週に7単位以下であれば、飲酒すは妊娠するまでの期間に影響を及ぼさず、全く飲まない女性に比べて妊娠しやすくなったというのです。
また、アルコールの種類別に妊娠するまでに要した期間を調べてみると
ワインを飲む女性はワインを飲まない女性やビールやスピリットを飲む女性に比べて摂取量に関わらず、妊娠までの期間が短いとの結果が出ています。