体外受精の治療成績には比較的少ないアルコール摂取量でも影響を 及ぼすとの報告がなされています。
体外受精に臨む2, 545組のカップルを対象にアルコール摂取量と4, 729周期の治療成績との関係を調べたアメリカの研究です。
週に4ドリンク以上のアルコールを摂取する女性は
それ未満の女性に比べて、出産率が16%低く
女性も、男性も週に4ドリンクのアルコールを摂取するカップルは
どちらもそれ未満しか飲まないカップルに比べて
出産に至る確率は21%、受精率が48%低かった。
ここで、注意しなければならないのはアメリカの基準飲酒量です。
アメリカでは1ドリンクとか、2ドリンクとしています。
これは日本の1単位、2単位とは違って
日本の1単位がアルコール20グラムであるのに対して
アメリカの1ドリンクはアルコール14グラムとされています。
この論文で体外受精の治療成績に影響が認められた4ドリンクとい うのはアルコール54グラムで、日本では2.7単位ということに なります。
体外受精の治療成績の場合は、比較的、 少量でも影響を及ぼすという印象を受けます。
これは体外受精を受けるようなカップルでは、年齢をはじめ、 アルコールの影響が大きくなるような背景があるのかもしれません 。
これまでの研究報告からアルコールの摂取量が多くなるほど妊娠し づらくなることは明らかです。
ただし、 一般に適量とされている量では相反する結果が報告されており妊娠 を希望される女性のための許容される(妊娠に影響しない範囲の) 飲酒量を設定することは困難です。
一方、体外受精の治療成績には少量でも影響を及ぼすようです。
そんな中でも、 アメリカ生殖医学会やイギリス政府機関では妊娠を望む女性のため の飲酒量の目安やガイドラインを設けています。
まず、アメリカ生殖医学会では1日2ドリンク以下としています。 アメリカの場合、 1ドリンクは14グラムとされていますので1日28グラム以下と なり、厚労省の一般向けの目安量を上回ります。
やはり、 アルコールの処理能力の人種間の差が大きいのかもしれません。 これはあまり参考にはなりません。
一方、イギリスは厳格です。
イギリスの政府機関であるNICE((National Institute for Clinical Excellence)のガイドラインでは「週に1~2回、1~ 2ユニットを超えないこと」となっています。
イギリスの基準飲酒量はユニットで1ユニットは8グラムです。で すから、お酒は週に1回、多くても2回程度にしましょう。
そして、その場合、アルコール8グラムを目安にし、 16グラムを超えないようにしましょう」ということになります。
アルコール8~16グラムを、 それぞれのお酒の種類で換算してみます。
・ビール(アルコール度数5度) 200~400ml
・ワイン(アルコール度数14度) 約72~144ml
・日本酒(アルコール度数15度) 約72~144ml
海外の目安をそのまま取り入れるのはナンセンスですが、 より厳格なイギリスのガイドラインを参考にするのが無難だと思い ます。
「週に1日か、2日、少量を」
ということになります。
あくまで、厳格な目安です。
ただ、不妊治療を受けていて、 気になるけれども飲みたいという方にとっては安心して楽しめるラ インではあると思います。