先日、受精卵の発育不全や着床障害に対して新たな治療が発表されました。
『出産すれば世界初 これまで妊娠しなかった夫婦が妊娠 新たな不妊治療』
発表したのは鳥取県米子市の「ミオ・ファティリティ・クリニック」で独自の
新しい方法を用いて妊娠に成功したと発表がありました。
新たな治療方法は体外受精もしくは顕微授精を施した受精卵から卵を包んでい
る透明帯と呼ばれる膜を取り除くというもので、その後受精卵を培養し子宮に
戻す技術です。
透明帯は、卵子を守る役割があるが、これを除去することによって従来の体外
受精や顕微受精だけでは受精卵が正常に発育しなかった患者に有効性が確認さ
れたとしている。
具体的には、従来の不妊治療を10回以上繰り返しても妊娠でなかった女性4
人に対しこの方法を施した結果、2人の妊娠が成立し経過も順調だという。
2人の出産は12月中旬頃の予定で無事出産すればこの治療方法による世界初
の出産例になるとしている。
見尾保幸院長は「40歳を超えると難しいが、ひょっとすると年齢が上がるか
もということまで期待して、多くの方に試みてほしい。
国内だけではなく、世界で新たな手立てとして利用してほしい」としている。
クリニックでは透明帯の除去が、なぜ受精卵の正常な発育を促すかはまだ解明
できていないとしているが、今後症例をさらに増やし安定した治療方法として
確立したいとしている。
詳しくは下記のURLよりNHKのニュースを確認下さい。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200516/k10012432601000.html?utm_int=news_contents_news-main_007
https://www.mfc.or.jp/archives/7309
今年の2020年4月13日には論文も発表されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32285294/
論文の要訳は
これまでの膨大な受精卵の発育過程のタイムラプス動画から、
卵子を取り囲んでいる透明帯と受精卵の間に繋がっている糸が見られる
箇所から細胞分裂時にフラグメンテーション(断片化した核を持たない
細胞)が発生しやすいことを見出しました。
フラグメンテーションの発生は受精卵の「良好な発育」と関連(負の相関)
があり、フラグメンテーションが「増える程」、受精卵の発育は「悪く」
なります。
そこで、彼らはこの透明帯と受精卵の間に繋がっている「糸」を切ってし
まえば、フラグメンテーションの発生は抑えられ、その結果、胚の発育は
良好になるのでは?との仮説を立てました。
また、受精卵から「透明帯を取る」ことで「糸が切れる」と考えました。
このことを証明するため、先ず、彼らは媒精により多精子受精となった異
常受精卵を用いて検証を行いました。
異常受精卵の「透明帯を取らない」グループと「透明帯を取る」グループ
の2つに分けて受精卵の発育を比較しました。
この結果、透明帯を「取らない」グループで胚盤胞まで到達した受精卵は無
かったにも関わらず、透明帯を「取る」グループの受精卵の30.4%が胚盤胞
まで到達したと報告されています。
この治療はある意味、逆転の発想で今後の生殖医療の新しいステップになり
えるものではないかと思います。
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肥満と運動に関して論文を見つけましたので要訳致します。
『肥満女性の体外受精前の運動が治療成績に及ぼす影響』
肥満女性の体外受精や顕微授精を受ける前の運動習慣はその後の高い着床率や妊娠率、出産率に関連することがイタリアで実施された試験で明らかになりました。
イタリアのモデナ・レッジョ・エミリア大学の研究チームは、BMIが30を超える肥満女性の運動習慣が体外受精や顕微授精の治療成績にどのような影響を及ぼすのかを調べました。
初めての体外受精や顕微授精に臨む216名の女性を対象に、治療開始時にアンケート形式の調査票(Global Physical Activity Questionnaire)を用いて日常の運動習慣を調べました。その結果から運動レベル別に以下の4つのカテゴリーにわけました。
(a)週単位で運動習慣がない
(b)週の大半は軽い運動を行っている
(c)週に1、2回、心拍の上昇や発汗を伴う運動を20分以上行っている
(d)週に3回以上、心拍の上昇や発汗を伴う運動を20分以上行っている
そして、運動しないグループ(175名)と運動習慣があるグループ(41名)にわけ、体外受精や顕微授精の治療成績との関連を解析しました。
その結果、運動習慣のあるグループの着床率や妊娠率、出産率が運動しないグループに比べて統計学的に有意に高く、
運動習慣のあるグループの着床率は22.7%(22/97)
だったのに対して、
運動しないグループでは6.9%(23/332)で、
妊娠率は39.0%(16/41)、16.0%(28/175)
出産率は24.4%(10/41)、7.4%(13/175)
で、体外受精や顕微授精前の運動習慣は良好な着床率や妊娠率、出産率に関連することがわかりました。
また、治療成績に関連する因子の影響を統計学的な手法で排除した場合、治療前に運動週間のある肥満女性は運動しない肥満女性に比べて
これらの結果から、肥満女性の体外受精や顕微授精前の運動習慣は減量の有無にかかわらず、治療成績の良好な影響を及ぼすかもしれないと結論づけています。
肥満は女性の妊娠する力を低下させると言われています。
肥満女性は妊娠に至るまで長い期間を要すること、不妊症のリスクが高くなること、自然妊娠を目指す場合でも、高度生殖医療を受けて妊娠を目指す場合でも、肥満女性はノーマルな体重の女性に比べて妊娠率や出産率が低く、流産率が高くなることは、多くの研究報告があります。
当然、食生活の改善や運動で減量することが不妊症リスクの低下に繋がると言われていますが、減量の有無にかかわらず、治療前の運動習慣は体外受精や顕微授精の治療成績にどのように関連するのかを調べたのが今回の研究報告です。
因みに肥満女性の定義ですがBMI(体格指数)を30以上としています。
日本肥満学会では、BMIが22の場合を標準体重としており、25以上の場合を肥満、18.5未満である場合を低体重としています。
結果は治療前に運動習慣のあった女性はなかった女性に比べて体外受精や顕微授精の着床率や妊娠率、出産率が良好だったというものでした。
肥満女性が妊娠しづらくなる原因として、さまざまなメカニズムによるものと考えられています。
ただ、興味深かったのは、今回の治療成績をみてみると、卵巣刺激の際に必要とされた排卵誘発剤の量や発育卵胞数、採卵数、受精率、分割率、高いグレードの受精卵の数においては、運動習慣のある女性とない女性の間には統計学的に意味のある差は出ていないことです。
つまり、治療前の運動習慣が寄与したのは、卵巣機能や受精卵の質ではなく、着床環境ではないかと考えられるわけです。
今回の試験は肥満女性を対象にしていますが、不妊治療に臨む全ての女性は、たとえ、ウォーキングのような緩やかなレベルでも運動する習慣を身につけることは着床環境にプラスになるのかもしれません。
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患者様をカウンセリングしているとよく御質問がある夫婦生活のタイミングの取り方に,
ついてですがインディアナ大学の面白い論文を見つけましたので要訳致します。
『排卵期以外でも性交することで免疫的に妊娠に有利になる』
月経周期を通して性交回数を増やすことで免疫システムが妊娠に有利に働くようになることがアメリカの研究で明らかになりました。
インディアナ大学のキンゼイ研究所の研究者らは、月経サイクルに限らず性交回数の多いカップルほど妊娠率が高くなるのは、性行為そのものが免疫システムに影響を及ぼしているのではないかと考え、研究を実施しました。
30名の健康な閉経前女性に、月経サイクル中の月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の4回、唾液を提供してもらい、唾液中の生殖ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)や2種類のヘルパーT細胞(Th1、Th2)が放出するサイトカイン(IFN-γ、IL-4)を測定し、それぞれの値の月経サイクル内の変動と性交との関係を解析しました。
その結果、性交のあった女性では、黄体期に妊娠に有利に働くサイトカインが優勢でしたが、性交のなかった女性ではみられませんでした。
このことから、性交によって月経周期中の免疫反応が妊娠に有利に働くようなるのではないかとのことです。
精子や胚、胎児は女性の身体にとっては「異物」ですから、女性の免疫システムは、当然、それらを排除しようとし、妊娠、出産することの障害になります。
つまり、そもそも、免疫と生殖、すなわち、外からの侵入者を排除し、自分の身体を守る働きと、精子を受け入れ、遺伝的に自分の半分の胚や胎児が成長していくことの間には大きな「矛盾」があるというわけです。
ただ、これまでの研究で、精子を子宮の入り口で排除していた頚管粘液の質が排卵が近づくと変化し、精子を受け入れるようになったり、体外受精の採卵や胚移植の前後に性交することで射出された精液が女性の免疫システムが胚を攻撃しないように働いたり、妊娠すると女性の免疫システムが変化し、胎児を守るように働くようになったりすることが知られていました。
その一方で、排卵期以外でも性交回数が多いカップルほど妊娠しやすいのは、性交そのものにもそのような効果があるのではないかとの仮説のもとに今回の研究が実施され、そのことが確かめられました。
性行為をたくさんの回数行うことによって、タイミングだけでなく、免疫システムが妊娠をサポートしてくれるというのです。
このことは自然妊娠だけでなく、人工授精や体外受精、顕微授精の治療周期でも同じことが言えるはずです。人工授精でも、体外受精でも、顕微授精でも、たくさん、性交したほうが妊娠に有利になるということになります。
ショウキT-1に含まれる8種類の糖鎖は細胞のレセプターになり細胞間の情報伝達や細胞間のコミュニケーションを良くする事で免疫反応の正常化が見込めます。
『免疫が正常に働く事は妊娠に有利になります。』
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先日、10/5~10/6 九州福岡県博多 で開催された、
日本IVF学会で話題になった最新の精子の検査方法をお伝えします。
今年の秋から来年にかけて、全国の大手クリニックで採用されると思われます。
①SCSA(精子クロマチン構造検査)
(DFI検査: DNA fragmentation index/DNA 断片化指数 )
どんなに形態の良い精子でも、運動率が良い精子でも、その精子の核がどのような状態かは顕微鏡下で判断することはできません。
男性不妊症の患者様では、クロマチンの欠陥や DNA の損傷を受けた精子の割合が多いと言われています。
SCSA は、そのような異常なクロマチンを持つ精子のダメージ度合いを検出する方法です。
*クロマチン=1個の細胞 (精子) の中に存在する、DNA とタンパク質の複合体のこと
【対象】
AIH,ART
ART 診の方は採卵前、または採卵日に合わせて採精していただきます。
一般診の方も、一般精液検査またはAIH の日に合わせて採精していただきます。
どちらの場合も、少量の精液で検査可能です。
【方法】
まず、精液を測定しやすい濃度に薄め、DNA の変性 (核酸やタンパク質などの生体高分子が、生理的条件での高次構造を失い変化すること=ダメージ) を誘導するために、酸性処理を用いた刺激を与えます。その後すぐにアクリジンオレンジという蛍光色素で染めます。
アクリジンオレンジは、通常2本鎖 DNA (=正常な精子DNA) に結合すると緑色に検出され、変性して2本鎖から1本鎖にほどけてしまった DNA (核タンパク質が不安定なため、刺激によりダメージを受けた精子DNA) は赤色に検出されるという特徴があります。
このような処理をした精液をフローサイトメトリーと呼ばれる器械にかけると、緑色の集団と赤色の集団に分けることが出来ます。
SCSA では、赤色に検出された集団の割合 (DFI) と、正常集団よりも数値が高かった割合 (HDS) で診断を行なっています。
【結果&診断】
DFI: DNA fragmentation index/DNA 断片化指数
不安定な核タンパク質を持った精子の割合がわかります。
この値が30% 以上だと、人工授精よりも体外受精、IVF よりも ICSI の方が妊娠率が高いことが報告されています。
HDS: High DNA stainability/高 DNA 染色性
未熟な精子の割合がわかります。
この値が 10% 以上だと、人工授精よりも体外受精の方が妊娠率が高いことが報告されています。
青い集団=正常精子
赤い集団= DFI:変性した精子
緑の集団= HDS:正常だが蛍光強度が高い精子(=未熟精子)
グレイの集団=ゴミや壊れた細胞
このSCSAによってわかる”精子のダメージ”は加齢により上昇し、また、採精からの時間経過とともに上昇する傾向があります。
もちろん、SCSA の結果だけで精子の良し悪しをすべて判断することはできないため、他の精液検査の結果と合わせて総合的に診断しています。
ORP測定の意義および効果
酸化ストレは精子にダメージを与えるといわれてます 。「 ORP 検査」は精液の酸化還元電位を測定することで、 精液中の 酸化ストレの強さが分かる検査です 。
この検査を行うとによって、説明がつきくい不妊体外受精や顕微授で結果が出ない場合どに有効と考 えられています。
ORPの測定には マイオキシス <MiOXSYS>という特殊な 機械を使用します。
高度精子液機能検査で、あなたの隠れ不妊源因を特定できる可能性があります。
1.通常の 精液検査では 検出できない酸化ストレによる 男性不妊 の評価が可能となります。
2.ART ARTを行うか ども含め 、今後の 治療方針を立て るため の指標となります 。
英メンズクリニックでも松康泉は精子の酸化ストレスを軽減する為に患者様に服用して頂き良い結果が出ております。
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