近年、男性由来の不妊が増えています。
特に妊娠初期の染色体異常による流産は男性の精子の、
染色体に多くの問題があるとわかってきました。
そこで近年は受精卵に対して PGS、NGS(着床前診断検査)を、
行うことが増えていますがその前に男性側の精子を詳しく調べる検査
『精子の異数性検査(SAT)』が増えています。
『精子の異数性検査(SAT)』
概要
精子染色体の異常率が高いカップルでは、
最大60%が流産へと繋がります。
自然流産との関連が最も高い、13番、18番、21番、
XおよびY染色体の異数性について、蛍光in situ
ハイブリダイゼーション(FISH法)にて解析します。
精子の染色体から、男性不妊の原因となる遺伝的病因について調べます。
利点
・流産リスクの低減
・男性側に不妊要因があるかどうか調べることができます。
・不妊症カップルに対し、体外受精を行う前に遺伝カウンセリングを
ご提供することができます。
SATの結果が異常と認められた場合、そのカップルに対して
PGS、NGS(着床前診断検査)を行うことをお勧め致します。
これにより、染色体に異常のない胚を移植し、妊娠率の向上
および流産のリスクを低減することが可能になります。
検査対象者
・男性因子:精子濃度が低い場合、精子の染色体異常発生率が高くなる為
・原因不明の反復流産
・反復着床不全
・前回の妊娠時に、胎児に染色体異常が見つかった方
結果
『精子の異数性検査(SAT)』の判定で精子染色体の異常は
3つのステージにおいて影響を及ぼします。
受精卵
・性染色体異常を持つ精子は、異数性胚へと繋がります。
・二倍体精子の場合、卵子と受精すると三倍体胚となります。
ICSI(卵細胞質内精子注入法)後の妊娠率は低下し、
流産率が上昇します。
子供への遺伝
・精子の染色体異常がある場合、その子供が遺伝子疾患になるリスクが、
増加します(ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ターナー症候群)。
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糖質の摂取量が多いほど男性の精子濃度が低くなる。
ハーバード公衆衛生大学院の研究者らは、ロチェスター大学で、
健康な男性学生(18~22歳)を対象に、2009~2010年にかけて、
環境中の汚染物質の精子の質への影響を評価するために実施しています。
調査で、食物摂取頻度調査で糖質の摂取量と精液の質との関係を調べました。
糖質の摂取量を4段階に分けたところ、糖質の摂取量が多くなるほど、
精子濃度が低くなることがわかりました(49、47、37、35)。
このことから糖質の摂取量と精液中の精子濃度が関連していると、
結論づけています。
また
『アジア人男性7282人における食事パターンと精液の質の関係性』
全7282名のアジア人男性に食事パターンに関するアンケートを実施し、
それぞれの精子検査を行った。 「欧米式の食事」が多いほど、精子濃度
および精子正常形態率の低下が生じた。
同様に、
「甘いお菓子や甘味飲料(ジュース等)」の摂取量が多いほど、
より低い精子濃度となる関連性があった。
「高炭水化物食」の摂取量の増加は、異常な精子運動率および
前進精子運動率、の増加と関連していた。
同様に、「高ナトリウム食(インスタント食品等)」の摂取量の増加は、
異常な精子正常形態率の上昇と相関していた。
The Association between Dietary Patterns and Semen Quality in a General Asian Population of 7282 Males
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最近、全国のクリニックで増えている 子宮内細菌叢・子宮内フローラ検査につ
いて論文が増えてきたのでご説明します。
【子宮内細菌叢・子宮内フローラって?】
健康な女性の生殖器には、ラクトバチルス属と呼ばれる菌が多く生息していま
す。いわゆる善玉菌といわれるものです。
この菌群が様々な理由で減少すると、
カンジダ腟炎や細菌性腟炎等を発症させると考えられています。
次世代シーケンサー(NGS)という最先端の遺伝子解析技術を利用することによ
り、子宮内のフローラ(細菌叢)のバランスを網羅的に解析することが可能です。
人間の体重の1-3%は細菌と言われています。人間はたくさんの細菌と共存して健康を保っています。
最近は、腸内フローラ、皮膚フローラについてTV番組でよく取り上げられています。
腸内フローラが乱れると、便秘や下痢だけでなく生活習慣病や老化などにも関係すると言われています。肌フローラが乱れると、肌荒れや吹き出物などを引き起こすと言われています。今回は、子宮内膜にいる細菌が、生殖に大きな影響を与えているかも知れないという論文です。
以下、論文紹介
m J Obstet Gynecol. 2016 Dec;215(6):684-703. doi: 10.1016/j.ajog.2016.09.075. Epub 2016 Oct 4.
Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure.
Moreno I, Codoñer FM, Vilella F, Valbuena D, Martinez-Blanch JF, Jimenez-Almazán J, Alonso R, Alamá P, Remohí J, Pellicer A, Ramon D, Simon C1.
「子宮内膜の細菌環境が不妊治療に及ぼす影響について」
女性の生殖器における細菌の役割で、よく知られているのが膣の自浄作用です。
健康な膣内にはラクトバチリスという常在菌がおり、女性ホルモンの働きで作られるグリコーゲンを発酵させて乳酸を作り、これにより膣内を酸性に保ちます。
このことが、大腸菌などの病原菌の繁殖を防ぎ、膣内を清潔に保っています。膣の細菌環境の乱れは、流早産などの産科合併症と関係があるとされています。
(現在、子宮内膜の細菌についてはあまりよくわかっていません。)
この論文では、従来の細菌培養とは異なり、次世代シークエンサーという遺伝子を調べる機械で、子宮内膜から採取した組織にいる細菌のDNAを調べ、子宮内膜にどのような細菌環境があるかを調べました。
論文で調べているのは以下の3点です。
①子宮内膜と膣の細菌環境の違い
②子宮内膜の細菌環境が性ホルモンの制御を受けているか
③子宮内膜の細菌環境が及ぼす生殖医療 体外受精への影響
論文の研究方法と結果です。
①13人の妊娠歴のある女性から黄体ホルモン投与後2日目着床期前と7日目着床期後の細菌を調べた結果、膣と子宮内膜の細菌環境はラクトバチリス優位であることは共通ですが、その割合や他の細菌の種類などは差異があり、異なる細菌環境でした。
LD群 : ラクトバチリス優位な子宮内膜(ラクトバチリスが90パーセント以上、lactobacillus dominant microbitoa)
非LD群 : ラクトバチリスが優位ではない子宮内膜(90パーセント未満である)に分類しました。
②22人の妊娠歴のある女性から44のサンプルをとり調べました。黄体ホルモン投与後2日目着床期前と7日目着床期後の細菌を調べました。
結果、両者に有意差はなく、子宮内膜の細菌環境は性ホルモンによる制御は受けていないという結果でした。
③体外受精中のERA検査子宮内膜受容能検査で受容能ありとされた女性35人から41サンプルを調べました。
非LD群では体外受精における着床率、妊娠率、妊娠継続率、生児獲得率が有意に低くなりました。
LD群 vs 非LD群
着床率 60.7vs23.1%
妊娠率 70.6vs33.3%
妊娠継続率 58.8%vs13.3%
生児獲得率 58.8%vs6.7%
論文では、子宮内膜にも膣と同様の自浄作用あるのではと、子宮内膜の酸性度を測定しましたが、LD群と非LD群では差がなく、非LDの細菌が起こす炎症が病因ではないかと筆者らは推測しています。
最後に、今回の研究は、子宮内膜の細菌環境が不妊原因の一つであることを示唆しています。
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妊娠を望むカップル、不妊治療を受けているカップルにとって、アルコール摂取については、少々、気になるところです。
「飲み過ぎ」は健康に損なうことは言うまでもありません。
また、妊娠中や授乳中はお酒は控えるべきことはよく知られていると思いますが、妊娠前については、飲酒の影響はどのように考えればいいのかについてお話し致します。
まず、厚生労働省が飲酒についてのガイドラインを定めているのでそれを確認しておきましょう。
厚労省は「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20グラム程度である」と定めています。
1日の飲酒量の目安の「アルコール20グラム」は日本の基準飲酒量の1単位に相当します。
ただ、これだけではどれくらい飲めるのかよくわかりません。
お酒の種類によって、アルコール度数が異なりますので、アルコール20グラムというのはどれくらいの量なのか、それぞれのお酒の種類ごとの1単位の量は以下の通りです。
・ビール(アルコール度数5度) 中ビン1本(500ml)
・缶チューハイ(アルコール度数5度)1缶(約500ml)
・ワイン(アルコール度数14度) グラス1杯(約180ml)
・日本酒(アルコール度数15度) 1合(180ml)
1日に飲む量はこれくらいまでにしておきましょうということです。
さらに、厚労省は週に2日は休肝日にするように提案していますので「週に5単位」ということになります。
ただし、これは、あくまで、一般向けのガイドラインで、残念ながら妊娠希望のカップルのためのガイドラインは決められていません。
これまでアルコール摂取と妊娠する力の関係について調べた研究が多数実施されていますので、それらをご紹介いたします。
『アルコール摂取と妊娠する力』
これまでアルコール摂取量と妊娠する力の関係を調べた研究報告では、アルコール摂取量が多くなると、やはり、妊娠しづらくなるとしています。
ただし、週に5単位くらいの飲酒量であれば、妊娠しづらくなるとするものもあれば、影響しないとするものもあり、反対に妊娠しやすくなるという報告もあったりして、「いろいろ」です。
代表的な論文を紹介します。
スウェーデンの研究でストックホルム在住の7,393人を対象にアルコール摂取と不妊症のリスクとの関係を18年間に渡って調べたところ、
週に7単位以上飲酒する女性は
週に2~7単位未満飲酒する女性に比べて不妊症リスクが58%高く
週に2.5単位未満しか飲酒しない女性は
週に2~7単位未満飲酒する女性に比べて不妊症リスクが35%低かった
といいます。
また、7,760人のデンマーク女性を対象に平均4.9年間追跡調査した研究では
女性の年齢が30歳未満であれば、アルコールの摂取量は妊娠に影響を及ぼさなかったのに
30歳を超えると、週に7単位以上飲酒する女性は、週に1単位未満の女性に比べると、不妊症のリスクが2.26倍だったと報告しています。
アルコールの摂取量が多くなるほど妊娠しづらくなり、その影響は年齢が高いほど顕著になるというわけです。
その一方で、飲酒したほうが妊娠しやすくなるとの報告もあります。
29,844人の妊婦にアルコール摂取と妊娠するまにかかった期間を調べたデンマークの調査では
週に14単位以上の飲酒は妊娠しづらくなるが
週に7単位以下であれば、飲酒すは妊娠するまでの期間に影響を及ぼさず、全く飲まない女性に比べて妊娠しやすくなったというのです。
また、アルコールの種類別に妊娠するまでに要した期間を調べてみると
ワインを飲む女性はワインを飲まない女性やビールやスピリットを飲む女性に比べて摂取量に関わらず、妊娠までの期間が短いとの結果が出ています。
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