不育症

男性の年齢や禁欲期間、精子の質は顕微授精治療に影響を及ぼすのか?

2019年6月5日 水曜日

今回は前回に引き続き男性不妊②の論文です。 

 
 
『②男性の年齢や禁欲期間、精子の質はICSI治療成績に影響を及ぼすのか?』

 
 
男性パートナーの年齢や禁欲期間、精子の質のICSI治療成績への影響を調査すべく、321名の卵子提供を受けた女性患者の427ICSI周期の治療成績を対象とした後ろ向き研究が実施されました。

 
 
それぞれの相関関係は以下の通りでした。

 
男性の年齢が高くなるほど、受精率や3日目良好胚率、正常分割速度胚率、胚盤胞到達率、良好胚盤胞率、着床率、妊娠率が有意に低下していました。

 
また、禁欲期間が長くなるほど、3日目良好胚率や正常分割速度胚率、胚盤胞到達率、着床率が有意に低下しました。

 
 
一方、精子数や運動率等の精液所見がよいほど、受精率や正常分割速度胚率、胚盤胞到達率、着床率が有意に高くなっていました。

 
 
男性因子の影響を調べるために卵子提供を受けてICSI治療に臨んだカップルを対象にていますが、男性の年齢の影響が最も大きかったようで、男性の年齢の影響は私たちが想像している以上に大きいようです。

 
 
女性と同様、男性の年齢も対策のしようがないものですが、禁欲期間を短くしたり、精子の質を改善することは取り組むことが有効です。

 
 
男性不妊にショウキT-1  
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精子を作るための流れ

 

男性は、はじめに、視床下部が「精子を作れ」と下垂体に号令をかけます。

この時期に視床下部からGnRHという性腺刺激ホルモン放出ホルモンを出して下垂体を刺激します。

 

視床下部から命令を受けた下垂体のゴナドトロピン分泌細胞は、LH(黄体ホルモン)FSH(卵胞刺激ホルモン)というホルモンを分泌し精子の製造工場である精巣に働きかけます。

 

LHFSHは女性だけではなく男性でも重要な役割を果たしています。(ちなみにLHとFSHを総称してゴナドトロピンと言います)

 

LHは精巣内のライディッヒ細胞を刺激し男性ホルモンであるテストステロンを産制し、FSHは精子生産部門であるセルトリ細胞に作用して精子の産制を促進します。

 

精細菅では精粗細胞が第一次精母細胞⇒前期精子細胞⇒精子の順で分化し精子になります。

ヒト精子の形成には少なくとも64日間かかり、この日数は通常一生変わらないとされています。

 

「たんぽぽ茶ショウキT-1エキス」はセルトリ細胞、生殖細胞、精巣内のライディッヒ細胞のホルモンレセプターに働きかけてホルモンレセプターを増やす事により精子の増成に寄与します。

 

 

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男性の年齢は顕微授精や体外受精の治療に影響を及ぼすのか?

2019年5月20日 月曜日

今年のヨーロッパ生殖医学会にて発表された研究報告から、今回は男性因子についての以下の演題をピックアップしました。

 

 

①男性の年齢はICSIやIVFの治療成績に影響を及ぼすのか?
②男性の年齢や禁欲期間、精子の質はICSI治療成績に影響を及ぼすのか?
③食事パターンは精巣の働きに影響を及ぼすのか?
④睡眠の質や就寝時間、睡眠時間は精子の質に影響するのか?
⑤抗酸化サプリメントによる酸化ストレス低減は精液所見や精子機能を改善するか?

 

今回は①の論文です。

 
 
『①男性の年齢はICSIやIVFの治療成績に影響を及ぼすのか?』
 

イギリスの研究チームは、男性の年齢は妊娠率や流産率にどのような影響を及ぼすのかを検討すべく、4271名の男性パートナーの4833周期のART治療を対象とした後ろ向き研究を実施しています。

 

 
 
男性パートナーの年齢で5つのグループ(35歳以下、36-40歳、42-44歳、45-50歳、51歳以上)にわけ、精液初所見や治療成績との関連を解析しました。

 

 
精液所見では、51歳以上の男性では精液所見がWHOの基準に達していたのは42%(56/133)で、51歳未満の男性の61%に比べて有意に低いことがわかりました。

 

 
全体の周期あたりの妊娠率は41.8%(2019/4833)でしたが、女性の年齢が35歳未満(51.1%)に比べて40歳以上(21.7%)では妊娠率は有意に低下しまし、女性の年齢の影響は顕著でした。

 

 
一方、男性パートナーの年齢が35歳未満(49.9%)に比べて36-40歳(42.5%)、41-45歳(35.2%)、46-50歳(32.8%)、そして、51歳以上(30.5%)と年齢が高くなるのに従って妊娠率が低くなり、女性の年齢やその他、影響する因子を統計学的に排除した結果、51歳以上になると有意に低下することがわかりました。

 

 
 
男性の年齢が51歳以上になるとART成績にマイナスの影響を及ぼすことがわかりました。
 
 
 
 
男性不妊にショウキT-1 
 
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精子を作るための流れ

 

男性は、はじめに、視床下部が「精子を作れ」と下垂体に号令をかけます。

この時期に視床下部からGnRHという性腺刺激ホルモン放出ホルモンを出して下垂体を刺激します。

 

視床下部から命令を受けた下垂体のゴナドトロピン分泌細胞は、LH(黄体ホルモン)FSH(卵胞刺激ホルモン)というホルモンを分泌し精子の製造工場である精巣に働きかけます。

 

LHFSHは女性だけではなく男性でも重要な役割を果たしています。(ちなみにLHとFSHを総称してゴナドトロピンと言います)

 

LHは精巣内のライディッヒ細胞を刺激し男性ホルモンであるテストステロンを産制し、FSHは精子生産部門であるセルトリ細胞に作用して精子の産制を促進します。

 

精細菅では精粗細胞が第一次精母細胞⇒前期精子細胞⇒精子の順で分化し精子になります。

ヒト精子の形成には少なくとも64日間かかり、この日数は通常一生変わらないとされています。

 

 

 

 

「たんぽぽ茶ショウキT-1エキス」はセルトリ細胞、生殖細胞、精巣内のライディッヒ細胞のホルモンレセプターに働きかけてホルモンレセプターを増やす事により精子の増成に寄与します。

 

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男性の喫煙。加熱式の電子タバコなら妊活に影響はないのか?

2019年1月15日 火曜日

男性の喫煙で加熱式の電子タバコと火をつける紙巻きタバコでは、

妊活での影響に差があるのか!?

 

『電子タバコなら妊活中も吸ってもいいですか?』 

 

といった質問が多いので今回のテーマといたします。

 

★「iQOS」で実験  
 
『加熱式たばこも血管には有害 血管内皮機能が低下』
 
IQOS
 
 
 
加熱式たばこ製品の「iQOS」(アイコス)は血管に悪影響を与えるという調査結果
 
を、米国のカリフォルニア大学が発表した。iQOSの蒸気に曝露したラットの血管
 
内皮機能は、一般的な紙巻きたばこの煙に曝露したラットと同程度に低下したと
 
いう。この研究結果は米国心臓学会(AHA)のサイエンスセッションで発表。
 
 
 
 
 
加熱式たばこでも血管内皮機能が低下
 
 
加熱式たばこは、たばこの葉を燃やさず加熱して生じた蒸気を吸って楽しむ製
 
品。このうち大手たばこ企業のフィリップモリス社が製造する「iQOS」は、
 
日本、カナダ、ロシアなどで販売されており、米国でも米食品医薬品局(FDA)に
 
対し承認が申請されている。通常の紙巻きたばこは、たばこ葉を600度で燃やす
 
が、iQOSでは350度で加熱するため、ニコチンが含まれた蒸気は生じるが煙は
 
ない。同社は「通常の紙巻きたばこの煙に比べ、iQOSが出す蒸気は、9種類
 
の有害成分の量を約90%カットしている」と主張している。
 
 
これに対し、カリフォルニア大学のマシュー スプリンガー教授(循環器内科学)
 
は、「たばこ企業では、加熱式たばこ製品が通常の紙巻きよりも健康への害が
 
少ないと主張していますが、こうしたデバイスの健康への影響は十分に検証さ
 
れていません」と言う。
 
 
 
スプリンガー教授らは実験ラットに
 
 
(1)iQOSを加熱した蒸気
 
 
(2)紙巻きたばこの煙
 
 
(3)清浄な空気
 
 
のいずれかを曝露させた上で、血流依存性血管拡張反応(FMD)測定により評価した。
 
FMD測定は、非侵襲的に「血管内皮機能」を測定する方法。血管の柔らかさを数値化することで、
 
早い段階で動脈硬化の傾向が分かる。
 
その結果、曝露は1回15秒間として5分間に5回行った場合、
 
血管内皮機能はiQOS群で58%紙巻きたばこ群では57%低下した。
 
 
曝露を1回5秒間として5分間に10回行った場合、
 
血管内皮機能はiQOS群で60%紙巻きたばこ群では62%低下した。
 
 
 
iQOSの蒸気への曝露は、紙巻きたばこに曝露した場合と同程度の、
 
 
血管内皮機能の低下をもたらすことが示された。
 
「新型たばこ」に対し呼吸器学会が見解 「健康に悪影響が出る可能性」
 
 
 
 
吸い続ければ健康に悪影響をもたらす可能性
 
「たばこの葉の燃焼が起きていない場合でも、血管内皮機能の低下の原因となる
 
化学物質がiQOSから放出されている可能性があります。
 
血管の機能が低下すると、心臓や他の臓器に、必要な血液が十分に行き届かくなり、
 
アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中などの危険性を高めます」と、スプリンガー教授は言う。
 
 
循環器系におけるたばこの煙への反応の仕方はヒトとラットでよく似ているため、
 
この研究結果はヒトにも当てはまる可能性があるという。
 
 
血管の状態を悪化させる物質の特定はされていないが、
 
最大の問題はニコチンではないかと推定している。
 
 
 
「たばこの害に関する研究は、経済的な利害関係から独立し適切に行われるべきで、
 
科学的な事実による裏付けが必要です。
 
たとえiQOSが普通の紙巻きたばこに比べ害が少ないとしても、吸い続ければ健康に
 
悪影響をもたらす可能性があることに注意を向けるべきです」と、スプリンガー教授は述べている。
 
この研究は米国立衛生研究所(NIH)とFDAによる資金提供を受けて実施された。
 
学会発表された研究は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。
 
 
米国心臓学会
カリフォルニア大学たばこコントロールセンター
 
 
 
 
加熱式タバコも紙巻きたばこもニコチンの量はそれ程変わらないという事をお伝えしましたが、
 
ニコチンそのものの妊活に対する害はどうなのでしょうか?  
 
 
 
『ニコチンが精子に与える影響について』

タバコが精子に悪影響を与える事については良く知られていますが、
 
実際にどの物質が悪いのでしょうか?

ニコチンよりタールが悪い、もしくは一酸化炭素が悪いなど色々言われていますが、

 
タールとはタバコの燃焼によって生じる物質の総称ですから色々な物質が含まれています。
 
 
 

ニコチンと精子の関係について調べた研究をご紹介したいと思います。
 
In vitro effects of nicotine on human spermatozoa

(実験環境においてニコチンがヒト精子に与える影響)

 
この論文は南アフリカのOyeyipo氏らが2013年のAndrologiaに発表した研究です。

この研究では19歳から26歳の12人の被験者から得られた精子に液体に溶かしたニコチンを加えて、

 
いくつかの濃度で精子の動きに与える影響を調べたものです。
 
 

評価項目としては、精子運動自動解析装置を用いた精子の運動の質と、
 
蛍光顕微鏡を用いた先体反応を見ています。
 
 
 
先体反応前と後の精子の状態
 
 
先体反応前と後の精子の状態
 
 
先体反応とは精子が卵子の表面に接近した時に起こる反応で、受精に欠かせない
 
ものですが、卵子に接近していないのに先体反応が起きてしまうとその後の受精
 
力が失われてしまいます。このような不必要な先体反応は化学物質や放射線
 
などによって引き起こされるとされており、妊娠力の低下を招くと考えられてい
 
す。この研究では19歳から26歳の12人の被験者から得られた精子に液体
 
に溶かしたニンを加えていくつかの濃度で精子の動きに与える影響を
 
調べています。
 
 
評価項目は、精子運動自動解析装置を用いた精子の運動の質と、蛍光顕
 
微鏡をた、先体反応を見ています。
 
 
 
ニコチン濃度別精子
 
 
上の棒グラフは精液にニコチンを加えて30分後、60分後、120分後、180分後の
 
精子の運動と先体反応を調べたものです。
 
 
 
これを見ると、ニコチン濃度が増える程、精子の運動の質は低下している事が
 
分かります。一方、先体反応についてはニコチン濃度が上昇するほどに反応
 
早まることが確認されています。
 
 
 
この研究ではさらに特殊な染色方法を用いて、精子の生存率を測定しています
 
ニコチン精子生存率
 
 
 
 
上の表を見ると、ニコチン濃度が高い程精子の生存率が低下していることが分か
 
ります。ということで結論としては、
 
 
 
・ニコチン自体が精子の状態を悪化させる。
 
 
・ニコチン濃度が高いほどより悪影響は強い。
 
 
でした。
 
 
この実験は精子に直接ニコチンを添加しており、実際の喫煙の状況とは異なりま
 
すが、ニコチンそのものが精子に影響を与えるという意味で重要な報告かと思い
 
ます。
 
 
 
結論として・・・
 
加熱式タバコも紙巻きたばこもニコチンの量はそれ程変わらないので、
 
男性の喫煙での精子への影響は加熱式タバコも紙巻きタバコもどちらも同じ。
 
 
妊活中の男性は禁煙するべきです。

夫婦喧嘩が炎症を引き起こす可能性がある?

2018年10月10日 水曜日

『夫婦喧嘩が炎症を引き起こす可能性がある』という 論文 が発表されました。

 

 

 

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24~61歳の結婚3年以上の43組の夫婦に意見がわかれやすい話題について
 
20分間話し合ってもらい、その様子を観察しました。
 
 
 
 
話し合いの前後に採血を行い、腸内細菌叢から血中に移行した細菌内毒素の
 
バイオマーカーの変化を比較したところ、相手に対して強い敵意を示した人は
 
敵意が弱い人よりレベルが高くなりました。
 
 
 
 
細菌内毒素のバイオマーカーは炎症マーカーと強い関連があり、
 
パートナーとの関係が悪いと腸内細菌叢から産生された細菌内毒素が血中に
 
流れ出して炎症反応を促進する可能性があります。
 
 
 
 
怒るとおなかや頭が痛くなることは経験的に皆様あると思いますが,
 
その根拠が今回の論文で示されました。
 
 
 
<参照>
■Kiecolt-Glaser JK et.al, Marital distress, depression, and a leaky gut: Translocation of bacterial endotoxin as a pathway to inflammation, Psychoneuroendocrinology. 2018 Aug 4;98:52-60. doi: 10.1016/j.psyneuen.2018.08.007
 
 
 
 
 
心と体は密接に関連しているのだと改めて思います。
 
 
 
 
子宮内膜や卵巣の炎症の治療には,
 
夫婦仲良しと言うのも一つの治療法であると言えます。