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『妊娠と流産と代替医療』について

2021年1月18日 月曜日

患者様が妊娠判定に胸を躍らせたのもつかの間、

おなかの中で小さな命が消えてしまうことは実は珍しいことではありません。

流産を経験すれば、その深い悲しみをもう二度と味わいたくないと思うのは当然です。

ただ、年齢が上がるほど流産率が高くなるのも現実です。

 

 

流産はなぜ起こるのか、また治療が必要な「不育症」はどのように診断されるのか?などの質問を患者様から頂きます。

今回は『妊娠と流産と代替医療』について書きたいと思います。

 

 

『30代後半で3割弱、40歳前後では約4割の妊娠が流産に』

 

「妊娠に気づかずお酒を飲んでしまった」

「仕事で長時間立ちっぱなしだった」

 

流産後、妊娠中の行動の何かが流産を引き起こす原因になったのではないか、と考えて自分を責める人は少なくありません。

しかし、流産は全妊娠のうちの約15%に起こるもので、さらにその原因の多くは受精卵の染色体異常。

どんなに気をつけていても防ぐことのできないものです。

 

平均して約15%といわれる流産率ですが、その確率は妊娠年齢が上がるほどに高まります。

 

30代後半では約3割弱、40歳前後になると約4割の妊娠が、流産という結果で終わります。

年齢とともに卵子が老化することがいちばんの原因で、受精しても染色体異常のために途中で成長が止まってしまうことが多くなるのです。

もちろんそうした現実を知っていても、実際に流産と診断されると悲しいし、精神的な負担ははかりしれません。

どこかに原因を求めたくなる気持ちも非常によくわかります。ただ、受精卵の染色体異常は偶発的なもの。

次回の妊娠には影響しません。自分を責めず、次の妊娠へと切り替えていけるといいですね

 

 

『原因不明の「不育症」も多い』

 

妊娠はするものの、2回以上の連続する流産、または死産などで赤ちゃんを得られない状態を、不育症と呼びます。

年齢はひとつの大きなリスク因子ですが、それ以外の原因については検査をしても原因が明らかにならない場合も多いといいます。

 

「不育症の治療は、リスク因子がどのくらいあるかを検査することから始まります。糖尿病や甲状腺機能の異常、子宮形態異常、また血液がかたまりやすくなる血液凝固異常などは、流産、早産のリスクを高めることがわかっていて、不育症のリスク因子とされます。ただし、こうした検査をしても原因がわからない人は、約半数にも上ります。その場合、おそらくは受精卵の染色体異常が原因での流産がたまたま続いてしまったと考えられ、その頻度は年齢と共に上昇します」

『2回連続して流産をした場合は精密検査を』

 

実際、2回連続で流産をした人も、3回目以降の妊娠で約80%が出産に至っているというデータがあります。

 

「一般的には連続して2回以上の流産、死産がある場合に検査を行います。3回の流産があれば、必ず検査を受けることをおすすめします。
が、2回、1回でもご本人の希望があれば、精密検査をすることは可能です。原因がわからないことも多いですが、それでも不安なままで次の妊娠に向かうよりストレスが軽減できる、という考えもあります。

 

検査は、一般的な産婦人科より、不妊専門クリニックなど不育症を扱っている医療機関で受けるのがおすすめです」

 

一般的には流産回数には、妊娠反応は出たものの胎嚢確認前に生理が起こる、いわゆる「化学流産」は含まれませんが、不妊治療の現場では妊娠回数と捉える場合もあります。診断は、流産回数のほか、流産した週数、年齢も考慮しながら総合的に行われます。

 

 

『不育症はどのような治療が行われるのか』

 

不育症は、検査で明らかになったリスク因子に合わせて治療を行います。

たとえば血液凝固系の異常があって、胎児や胎盤への血流が滞りやすくなることが流産の原因となるケースがあります。

そうした場合は、痛み止めとしても使われる抗凝固薬であるアスピリンを低容量内服することで、血液をサラサラにし、流産を予防します。

アスピリンを飲み始めるタイミングは、医師によっても見解がわかれますが、着床期前後に飲み始めるのが一般的です。

妊娠中もしばらく継続して内服を続け、産科医師の判断で終了します」

 

糖尿病や甲状腺機能異常などの内分泌異常がある場合も、原因となる病気の治療を行い、症状をコントロールすることで流産を防ぐことができます。

 

子宮形態異常がある場合は、手術を行うか、経過観察をしながら妊娠をめざすかを検討します。

手術を行う場合も、体への負担の少ない内視鏡手術で行うことが増えています。

 

また、夫婦のどちらかに染色体の一部が入れ替わっている「転座」がある場合も、流産の確率が高くなることがわかっています。

この場合は、受精卵の着床前診断によって染色体の異常がないものを戻す方法があります。

 

 

『不育症と診断されても約8割は出産できる』

 

不育症と診断されても、適切な治療を行うことで約8割の方が赤ちゃんを出産するに至っているというデータがあります。

 

「流産の経験があると、また今回も悲しい結果になるかもしれないと、どうしても不安が強くなってしまいますね。でも、妊娠中のストレスはできるだけ減らしたいものです。

 

安心して日々を過ごすことは、不育症への治療としても重視されています。

 

『代替医療』といって、医療従事者が患者さんの心に寄り添う精神的ケアや漢方薬や鍼灸治療などの体質改善を行うことで、生児獲得率が上がることが報告されています。

 

流産を恐れすぎず、心穏やかに過ごすことや体質改善することも不育症の対策として有効といえます。不安を抱え込まず、医師やカウンセラー、パートナーに吐き出すことも大事。

 

「検査で原因がわかって治療を受けている方だけでなく、流産回数が2回に満たず診断を受けてない方、検査をしても原因がわからない方も、次回の妊娠時には代替医療によって不安を取り除くことや体質改善が重要です」

 

 

『漢方ってなに?』

 

1 心身一如(しんしんいちにょ)

心身一如・・この100年、目覚しい進歩とともに病気の治療に大きく貢献してきた現代の医療は、今後さらに標的を絞った専門的かつ細分化された治療が主流になっていくと思われます。

 

一方、漢方では心(精神活動や感情など)と体(内臓機能など)は切っても切り離せない密接な関係にあるものと考え、一つのものという意味で“心身一如”と捉え、治療するのが特徴です。

 

内分泌機能の乱れが、精神活動の乱れと密接に関係している女性の病気に、漢方治療が適しているといわれるのも、このような考えがベースにあるからだろうと思われます。

『不育症の原因と治療について④ 免疫の因子について』

2020年12月21日 月曜日

人には本来、体の中に異物が入ってきた時にそれを攻撃する反応が起こります。

 

この免疫の働きが不育症の要因となることについて書きます。

 

 

 

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(自己抗体異常)

 

自己抗体異常とは、自分の体の細胞を自分の抗体で攻撃してしまう病態です。

 

本来、抗体は細菌などの異物に対して自分を守るために攻撃を行うものですが、自己抗体異常の場合は、自分の細胞に対して攻撃し、流産を引き起こすと考えられます。

 

 

この治療には以下のものがあります。

 

 

治療① 低用量アスピリン療法

 

月経周期の高温期(排卵後7日目頃)から低用量アスピリン(100mg)錠を1日1回、1錠内服します。通常妊娠27週末まで続けます。

 

 

 

治療②柴苓湯(さいれいとう)(漢方)内服療法 

 

異常が判明しだい内服開始し、分娩前まで継続します。

喘息等でアスピリンが使用できない方の選択肢にもなります。

自己免疫疾患の可能性がある場合には専門科へご紹介し、ともに出産に向けて治療を行っていきます。

 

 

 

(同種免疫異常)

 

胎児の半分は父親の遺伝子由来ですので、胎児は母体にとって自分とは異なる遺伝子をもつ「異物」です。

 

妊娠時は母体側と胎児への攻撃を抑制(寛容)する反応が働き、妊娠が継続されます。

 

ところが、同種免疫異常の場合、攻撃が強すぎたり、寛容がうまく働かずに流産となることがあります。

 

主に、免疫に関与するヘルパーT細胞の検査(Th1/Th2)を行い、異常があれば免疫抑制剤のタクロリムスという薬を使用します。

『不育症の原因と治療について③ 血液の凝固因子について』

2020年12月18日 金曜日

血液の凝固因子について書きます。

 

 

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血液は、傷や出血があった際には、様々な因子が働いて固まる仕組みになっていますが、血液が固まりやすい状態が不育症の要因となると考えられていて、次のようなものがあります。

 

 

(抗リン脂質抗体症候群)

 

抗リン脂質抗体症候群では、血液が固まりやすく(血栓ができやすく)、胎盤の血液循環が悪くなり、流産を起こしやすくなると考えられています。

 

 

 

(血液凝固系異常)

 

プロテインS、プロテインC、血液凝固第Ⅻ因子など、血栓を予防する物質が低下することにより、血が固まりやすくなり、流産を起こしやすいとされています。

 

これらの場合には共通して以下の治療を行います。

 

 

 

治療① 低用量アスピリン療法

 

月経周期の高温期(排卵後7日目頃)から低用量アスピリン(100mg)錠を1日1回、1錠内服します。

通常妊娠10週あるいは27週末まで続けます。

 

 

 

治療② ヘパリン療法

 

妊娠判明時から開始します。

異常項目の種類や過去の流死産の既往により、妊娠初期のみ、あるいは分娩前頃まで、ヘパリン2500〜5000単位を1日2回皮下注射(合計1日5000〜10000単位)します。

 

毎日注射しますので、自己注射をご指導されます。

治療①または②を単独で、あるいは治療①、②の併用療法を行います。

併用療法は原則として検査値が2回連続して陽性の場合の方が対象となります。

 

 

治療による副作用

 

低用量アスピリン療法、ヘパリン療法を行うと、通常に比べ出血しやすくなります。

 

ヘパリン療法開始時は、まれですが血小板減少という副作用が起こることがありますので、頻回に血液検査して異常がないか調べます。安定すれば2週〜1カ月おきに検査します。

 

出血の危険性が高いため、ヘパリン療法を中断しなければならない方が稀にいらっしゃいます。

 

また、アスピリンにより端息が誘発されることがあります。端息の既往がある方は医師にご相談下さい。

『不育症の原因と治療について② 子宮や感染症の要因について』

2020年12月15日 火曜日

 

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(子宮の異常)

 

子宮筋腫、子宮内膜症、子宮形態異常(双角子宮、中隔子宮、重複子宮など)、子宮腔内癒着、内膜ポリープなどが流早産の原因となることがあります。

 

子宮鏡検査や子宮卵管造影検査、必要に応じてMRI検査などを行い、流早産の原因となる可能性が高そうな場合は、子宮鏡下手術、腹腔鏡手術(専門施設へご紹介)等により治療を行います。

 

 

 

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(感染症)

 

ウイルス感染症、クラミジア感染症など

膣、子宮、卵管などに炎症を起こしやすい菌やウイルス、病原微生物の感染は妊娠維持を妨げることがあります。

 

治療には抗菌薬を内服したり、膣内に投与を行います。また、感染予防もご提案します。

 

 

 

(染色体変化)(ご夫婦いずれか)

 

夫、または妻のいずれかに染色体変化がある場合に流産を繰り返すことがあります。

染色体の変化がわかった場合、残念ながら治療の方法がありません。

 

しかし、最終的には赤ちゃんを授かることができるケースも少なくありません